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履歴  

2017年3月6日公開

災害調査 課題名  

研究代表者雪氷災害調査チーム・阿部幹雄実施期間2016-2017シーズン
研究参加者古市竜太(マウンテンガイド・コヨーテ) [リーダー]
榊原健一(北海道医療大学) [Sリーダー]
原田裕介(寒地土研)
下山宏(北大低温研)
板垣力(陸上自衛隊)

[目  的]  

2017年2月25日にセコ春の滝で発生した雪崩の調査。【速報】

注)速報であり,本報告までに、編集によりデータが追加され、数値等は変更される可能性がある.
また、破断面の観察についての詳細データはまとめ次第、報告する予定である。

[災害の概要]  

2月25日午前10時30分ごろ、北海道倶知安町のニセコアンヌプリの立ち入りが禁止されたスキー場のコース外、春の滝付近でスノーボードをしていた5人のうち3人が雪崩に巻き込まれた。1人は自力脱出したが、2人が埋没。埋没した1人は、頭部が露出していた。深さ約2.5mに埋没していた1人は、同行者により雪崩トランシーバーによって発見された。2人は一緒にいた仲間や救助に駆けつけたスキーパトロールなどによって救出されたが、倶知安町の会社役員でニュージーランド国籍の男性(35)が搬送先の病院で死亡が確認され、東京に住む日本人男性(35)も胸に軽いけがをした。警察によると、雪崩の範囲は最大幅およそ200m、長さおよそ350m、デブリの厚さ3mに及んだという。

[実施内容]  

  • 2017年2月27日9:40頃倶知安町山田道道343号標高206 m地点より北西方向の道路の除雪最終地点より入山.
    (ヒラフと花園のスキー場の間の南東尾根上の三角点545.7 m(電波塔の付近)より約70m下方の東北東面(標高520m)で調査を実施.)
  • 2017年2月27日11:30頃調査地点に到着
  • 2017年2月27日15:15調査をおおよそ終了.
  • 2017年2月27日15:30頃より調査地点から下山を開始.
  • 2017年2月27日16:30調査メンバーは全員無事下山.
  • 調査箇所選定の経緯
    ・立ち入り禁止地区である「春の滝」は、雪崩の危険性があるので立ち入らない.
    ・春の滝と同方位、同じ標高の斜面で積雪断面観測を行う(スキー場に隣接していない).

[成果と効果]  

<雪崩の概要>  

  • 発生時刻:2017年2月25日10:30頃
  • 面発生乾雪表層雪崩
  • トリガー:スノーボーダー
  • 調査日時:2017年2月27日

<規模、破断面の特徴>  

Helicopter shot_abe3.jpg
604x408 229.8KB<写真判読および現時点の考察>
1)「春の滝」右岸において、複数の雪崩破断面が確認できた。本流の破断面は、ほぼ沢底まで伸びていた。
支流(通称:1番沢、2番面)の破断面は、本流と比較し小規模であった。
2)春の滝本流と1番沢との合流点付近に、2つの穴(ピット)が確認できた。
捜索時に掘られたものと見受けられ、埋没者位置と推察される。
3) デブリ末端は、捜索時下方の穴より20m程度下流まで到達していた。
4) 1番沢の雪崩デブリの上部に、本流からの雪崩が流下した跡が確認できた。
5) 1)〜4)より、埋没した2人は1番沢を滑降中に雪崩を誘発し、その下流で埋没したと推察される。
その後、本流にて雪崩が発生したものと考えられる。
6)「春の滝」以外にも、この雪崩事故とは別の雪崩の痕跡があった。
写真1.↑破断面、シュプールとトレース、デブリ末端(推定)
2017年2月27日11:00頃 阿部幹雄撮影
abe_4111.jpg
2208x1474 3435.6KB
 : NIKON CORPORATION
 : NIKON D800
 : 2017-02-27 10:56:07
 : 1/750
 : f/11.0
 : 38mmabe_5824.jpg
2208x1474 3111.6KB
 : NIKON CORPORATION
 : NIKON D800E
 : 2017-02-27 10:45:00
 : 1/1000
 : f/11.0
 : 105mm
写真2.春の滝全景.写真3.雪崩堆積区およびデブリ末端(推定)の様子.

<積雪断面調査>  

  • 破断面に近い条件と考えられるヒラフと花園のスキー場の間の南東尾根上の三角点545.7 m(電波塔の付近)より約70m下方の東北東面(標高520m)で積雪断面を調査した(図1,図2).
  • 調査地点の北側すぐ横において,シャベルコンプレッションテストを実施し,破断したと考えられる弱層において,WL1にてCTH22(SP),WL2にてCTH25(SP)を得た.
    併せてシアーフレームテストを実施し,WL1にてSFI: 1227(Pa) およびSI: 3.5,WL2にてSFI: 1188 (Pa) およびSI: 1.7を得た(図3).
     
  • 調査員が545.7 m(電波塔の付近)より下降中に,ノール状地形にて図4のように積雪が破断した.
  • スキーヤーが隣接斜面を滑走したところ,図5のように積雪表面にクラック(5-10m)が発生した.


調査地点緯度N42˚52'45"経度E140˚42'19"標高520 m
斜度45˚方位東北東
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1691x1054 2048.8KB
図1. 現地地図.
背景地図等データは国土地理院の電子国土Webシステムを利用した.
pit_check.jpg
961x520 185.8KB
図2. 積雪断面観測(ピットチェック)結果.
170227niseko1.jpg
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605x980 522KB
図3. ピットチェック状況および弱層(Weak Layer: WL1, WL2)の雪結晶.図4. ノール地形での破断の状況および弱層(Weak Layer: WL1, WL2)の雪結晶.
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図5. 積雪断面観測隣接斜面におけるスキー滑走でのクラック発生状況.

[成果の発表・貢献]  


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