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2021年3月4日9:00 Ver.1公開
災害調査 課題名 大雪山系上川岳付近雪崩事故調査 Hokkaido Kamikawa-dake Avalanche Accident 【速報】Prompt report 
研究代表者 Organizer | 尾関 俊浩 Toshihiro OZEKI, Hokkaido Univerisy of Education | 実施期間 Period | 202--2021シーズン 2021年2月28日 |
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研究参加者 Members | 大西人史 (北海道立総合研究機構) Hitoshi ONISHI (HFPRI,HRO) 三浦正義(バビシェマウンテンクラブ):情報・写真提供 Masayoshi MIURA(Babishe mountain club):Providing information and photos |
[目 的]Objective 
- 2021年2月28日に大雪山系上川岳付近で発生した雪崩の情報収集。【速報】
注)速報であり,本報告までに、編集によりデータが追加され、数値等は変更される可能性がある.
[災害の概要]Outline of the incident 
行動概要: (三浦(バビシェマウンテンクラブ)および事故当事者からの情報提供・聞き取り、両者から提供されたGPSデータより) 
- 2021年2月28日8:13、北海道大雪山系上川岳付近の白水沢(標高1,540m)で雪崩が発生し、4人パーティのうち2人が巻き込まれた。
- パーティは前々日に層雲峡温泉から入山し、上川岳付近を経由して旭岳まで縦走する計画だった。しかし風が強いため3日目に縦走を中止し標高1,800m地点から下山中、上川岳南東の台地状のところから白水沢へ降りる部分のノールで雪崩を誘発し、A,Bの2人が流された。
- 雪崩れた雪は沢の反対側にぶつかって堆積し、その中にAB共に埋没した。
- 残りの2人は雪崩トランシーバーによる捜索を実施、頭部胸部はすべて埋没していたが手とスキーの1部が雪面に出ていたAを発見、次いで雪崩トランシーバーによるファインサーチで全身埋没していたBを発見、Aは15分,Bは25分で気道確保。埋没深はAが20cm、Bが70-80cm。Aは気道確保した時点で呼吸なし意識無し、1-2分後に呼吸再開。Bは気道確保の時点で呼吸あり意識無し。
- 8:44 近くにいた別の4人パーティが現場に到達して救助に加わり、2人の全身が掘り出された。2人とも明らかな外傷はなかった。
- 尾根から降りてきた別の2人パーティが、携帯電話が繋がる尾根に再度ハイクアップして警察へ救助要請の電話連絡を行った。
- Aは低体温症により動けなかったため,ツエルトで覆った雪洞を構築し、その中で保温・加温処置が行われた。その結果、1-2時間後には正常に会話できるようになった。
- Bは保温処置により間もなく自力で動けるようになった。
- 道防災航空隊のヘリが何度か救出を試みたが、気流が悪く収容できなかった。
- 14:40 事故に遭遇したパーティ全員は自力で下山を開始。
- 16:00 救助に向かっていた道警の救助隊と合流。
- 18:00 白水橋に下山。
気象状況: (三浦(バビシェマウンテンクラブ)からの情報提供) 
- 風は白水沢の上流から下流に向けて間欠的に吹いており、強い時は13-14m/s、弱い時は3-4m/sだった。地吹雪で周囲が見えにくい状況。レスキュー中にどんどん風が弱くなり、雪洞への収容完了時にはほぼ無風、快晴になっていた。稜線は飛雪の向きから西北西〜北西の強風だったと推測される。
- 気温は、黒岳ロープウェイ駐車場4時時点で-14℃、雪崩現場8時44分時点で-5℃度。
積雪の状況: (三浦(バビシェマウンテンクラブ)からの情報提供) 
- 雪崩れた下の層は硬い層で、その上にウインドスラブが形成されていた。
[成果と効果]Results 
<雪崩発生地点>Avalanche occurrence point (三浦(バビシェマウンテンクラブ)および事故当事者から提供されたGPSデータより) 
雪崩発生地点 Avalanche occurrence point | 緯度 Lat | 43度42分18秒 | 経度 Long | 142度54分12秒 | 標高 Elev. | 1,540m |
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方位 Direction | 東北東 | 斜度 Slope | 40度 |
<雪崩範囲>Avalanche area (三浦(バビシェマウンテンクラブ)からの情報提供と事故当事者から提供されたGPSデータより) 
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地図1.雪崩発生地点 | 地図2.雪崩範囲 雪崩の規模は幅20-30m、長さ約100m、破断面の厚み10-15cm デブリ末端に2名が埋没した。 |
背景地図等データは国土地理院の電子国土Webシステムを利用した |
<発生区,堆積区写真>Avalanche release point and debris (三浦(バビシェマウンテンクラブ)提供) 
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写真2.発生区と堆積区を横から撮影 左が堆積区、右上が発生区。 反対側の斜面に雪崩れた雪がぶつかって堆積している様子が分かる。 | |
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写真1.埋没地点から見た雪崩発生区 | 写真3.発生区 |
![]() | 写真4.発生区の詳細 ノール上部と側方に破断面が見える。 捜索者のシュプールが滑り面に残されている。 このあと地吹雪で破断面は埋没した。 |
所見 Comments 
- 事故後,地吹雪によって破断面が埋没したことから,積雪調査は行わなかった.
- 雪崩斜面の写真は三浦(バビシェマウンテンクラブ)より情報提供をいただいた.
- 発生区は1,540 m a.s.l.の斜度40度の東北東斜面(地形図より推定).
- 面発生乾雪表層雪崩と推定される.
- 弱層となった雪質は不明である.
[成果の発表・貢献] Publication and contribution 
添付ファイル:







