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いつも日本雪崩ネットワークに対する理解とサポートをありがとうございます。
大変残念なことに、本日は悲しいお知らせがあります。
日本雪崩ネットワーク設立時からの会員であり、また理事の一人でもあった池田慎二博士が、2016年2月4日、南アルプスの山中にて滑落事故により亡くなりました。池田氏は国立研究開発法人土木研究所
雪崩・地すべり研究センターの専門職員として山岳積雪の調査を実施しており、その下山時での事故でした。
池田慎二氏は、日本において、アカデミックな学術の世界と、山岳ガイドなど現場プロを繋ぐ<架け橋>になっていた希有な存在の方でした。いずれの世界にも足を置きつつ、その両者の良い面、弱い面をきちんと理解した上で、研究の推進と現場プロの育成に情熱を注ぎました。雪崩業務従事者レベル2モジュール1での雪氷学の講義、あるいは現場プロの情報交換会であるアバランチ・ミーティングにおいて、彼のユーモアある語り口と決して偉ぶらないオープンマインドな態度は、現場プロたち、そして日本雪崩ネットワーク会員にポジティブな大きな影響を与えました。また、『 雪崩リスク軽減の手引き
』の執筆など、一般山岳利用者に対しても、いかにして雪崩の危険を平易かつ簡潔に伝えるのかを、一人の山岳利用者の立場で考えることができた人でした。
また、池田慎二氏は、中部山岳域の積雪特性を研究テーマとし、この20年間、取り組んできました。例年、標高1800m付近に複数の定点を設け、継続的な積雪観測を行っていましたが、今回の事故は、その最中に起こりました。彼の研究は一見、地味なものに見えるかも知れません。しかし、高い標高帯での積雪や気象観測の定点をほとんど持たない日本においては、山岳利用者の安全に係わる極めて重要な仕事でもありました。池田慎二氏の死は、日本の冬季山岳レクリーション界にとって極めて大きな損失です。
過日、ご家族のご意向により、ごく親しい方での密葬が終わりましたので、ここにご報告致します。
2016年2月8日
理事長 出川あずさ
特定非営利活動法人日本雪崩ネットワーク