履歴 
2015年12月31日作成, 2016年01月02日更新
災害調査 課題名 
研究代表者 | 雪氷災害調査チーム・阿部幹雄 | 実施期間 | 2015-2016シーズン |
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研究参加者 | 宮下 岳夫 (アルパインガイドノマド) [リーダー] 大西 人史 (三段山クラブ) 尾関 俊浩 (北海道教育大学) 榊原 健一 (北海道医療大学) 佐々木 大輔 (GUIDE BANKEI) 中川 伸也 (Natures) 青木 倫子 (Mountain flow) [協力] |
[目 的] 
2015年12月30日に旭岳で発生した雪崩の調査。【速報】
注)速報であり,本報告までに、編集によりデータが追加され、数値等は変更される可能性がある. また、破断面の観察についての詳細データはまとめ次第、報告する予定である。
[災害の概要] 
- 2015年12月30日11:40、旭岳の通称奥盤の沢(裏盤の沢)で雪崩が発生し、スノーボーダーが巻き込
まれたとの目撃証言があった。道警山岳救助隊および自衛隊による捜索が12月30日、31日と実施されたが、
雪崩トランシーバーの信号受信およびプローブヒットによる埋没の確認はされず、また、宿泊施設に帰ってこ
ない客もいない、駐車場に放置車両もない、捜索願も出されないなどから、雪崩に埋没したスノーボーダーは
いなかったと判断し、31日15時過ぎに捜索は打ち切りとなった。
[実施内容] 
- 2015年12月31日05:00に札幌からの調査メンバ出発。
- 2015年12月31日08:00に東川からの調査メンバと合流し7名で打ち合わせ。
- 2015年12月31日09:00に旭岳ロープウェイ始発便に乗車し、姿見駅に移動。
道警捜索現地本部と打ち合わせし、許可を得て、雪崩発生現場に立ち入り、
破断面の調査、雪崩発生地点の調査を実施した。 - 2015年12月31日15:30、調査メンバ、下山。
[成果と効果] 
<雪崩の概要> 
- 発生時刻: 2015-12-30 11:40 (およそ,目撃情報による)
- 面発生 乾雪表層雪崩
- トリガーはスノーボーダー.雪庇崩落を伴う(目撃情報による).
- 調査日時: 2015-12-31 10:30--15:00
<規模、破断面の特徴> 
破断面(調査地点) | 緯度 | N43˚39'04.1'' | 経度 | E142˚49'29.6'' | 標高 | 1,475 m |
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方位 | 南西 | 長さ | 69.9 m (直線距離), 82.5 m (総長) | 厚さ | 96 cm(滑り面は 積雪表面より120 cm深) | |
斜度 | 積雪表面 47°, 滑り面 41° | 雪質 | 融解凍結層(ざらめ+こしまり)の上のこしもざらめ 粒径 0.2-1.0 mm | |||
破断面からデブリ末端まで | 距離 | 約 360 m | 標高差 | 約 217 m | 走路の幅 | 約 30 m |
<雪崩範囲> 
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地図1.雪崩範囲図 | 地図2.雪崩範囲拡大図 |
背景地図等データは国土地理院の電子国土Webシステムを利用した |
<破断面,発生区写真> 
<破断面調査結果> 
- 確認されたスノーボードまたはスキーのトレース3箇所のうちの1つを選択し破断面の調査をおこなった.
- 破断面調査の東側すぐ横でシャベルコンプレッションテストを2人が各々2回実施し,
破断した弱層において, CTE, CTMx3 (SP) の結果(佐々木: CTE5, CTM13, 中川: CTM20, CTM13).
<破断した弱層> 
- 地表から90-91 cmの層で破断が確認された.
- 90-91 cmの層の雪質は,しまり雪とこしもざらめ雪(写真4).
<積雪の安定度> 
- 弱層においてシアーフレームテストを行い,上載積雪と斜度から斜面安定度SIを求めた.
- 場所を変えて2回行ったところ,SI=1.8と2.9を得た.
また,断面調査のすぐ近くでシャベルコンプレッションテストを4回(2人×2回)実施したところ,破断した弱層において,CTE1回,CTM3回の結果を得た. - 破壊様式は全てSPであり,破壊の伝搬性が高い弱層であったことがうかがえる.
- 以上より,所によっては斜面安定度が低く,弱層の破壊が平面的に伝搬して面発生雪崩の発生に繋がったことが推定できた.
[成果の発表・貢献] 
- 学術論文
- 尾関俊浩,榊原健一,宮下岳夫,大西人史,佐々木大輔,中川伸也,青木倫子,2016:2015 年12 月30 日に北海道旭岳奥盤の沢で発生した雪崩の調査報告.
北海道の雪氷,35,63-66.<https://www.seppyo.org/hokkaido/publications/journal/no35> - T.Ozeki, H.Arakawa, A.Hachikubo, Y.Harada, G.Iwahana, Y.Kodama, K.Nakamura, D.Sakakibara, K.Sakakibara, T.Sawagaki, K.Shimoyama,
S.Sugiyama, K.Yamanoi, S.Yamaguchi, E.Akitaya, A.Tachimoto, 2018: Characteristics of weak layers of slab avalanches that occurred in Hokkaido
in the decade from 2007 to 2017. Proceedings of International Snow Science Workshop 2018, 997-1000.
<https://arc.lib.montana.edu/snow-science/item.php?id=2695>
- 尾関俊浩,榊原健一,宮下岳夫,大西人史,佐々木大輔,中川伸也,青木倫子,2016:2015 年12 月30 日に北海道旭岳奥盤の沢で発生した雪崩の調査報告.
- 発表
- 尾関俊浩,榊原健一,宮下岳夫,大西人史,佐々木大輔,中川伸也,青木倫子,2016:2015 年12 月30 日に北海道旭岳奥盤の沢で発生した雪崩の調査報告.
(公社)日本雪氷学会北海道支部研究発表会,札幌. - T.Ozeki, H.Arakawa, A.Hachikubo, Y.Harada, G.Iwahana, Y.Kodama, K.Nakamura, D.Sakakibara, K.Sakakibara, T.Sawagaki, K.Shimoyama,
S.Sugiyama, K.Yamanoi, S.Yamaguchi, E.Akitaya, A.Tachimoto, 2018: Characteristics of weak layers of slab avalanches that occurred in Hokkaido
in the decade from 2007 to 2017. International Snow Science Workshop 2018, Innsbruck.
- 尾関俊浩,榊原健一,宮下岳夫,大西人史,佐々木大輔,中川伸也,青木倫子,2016:2015 年12 月30 日に北海道旭岳奥盤の沢で発生した雪崩の調査報告.