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2020年2月4日作成 (Registered Feb.4th 2020)
2020年2月5日公開 (Online Feb. 5th 2020)
2020年2月6日公開 (Update Feb. 6th 2020)

災害調査 課題名 敏音知岳(ピンネシリ)雪崩調査 Hokkaido Pin-ne-shiri Snow Avalanche【速報】Prompt report  

研究代表者
Organizer
雪氷災害調査チーム
Snow Avalanche Research Team,
Japanese Society of Snow and Ice.
実施期間
Period
2019-2020シーズン
2020年2月2日調査実施
研究参加者
Members
下山 宏(調査チーム・北海道大学低温科学研究所)
Kou SHIMOYAMA (Institute of Low Temperature Science, Hokkaido Univ.)

杉山 慎(調査チーム・北海道大学低温科学研究所)
Shin SUGIYAMA (Institute of Low Temperature Science, Hokkaido Univ.)

榊原 健一(調査チーム・北海道医療大学)
Ken-Ichi SAKAKIBARA (Health Sciences University of Hokkaido)

北川 直樹(現地案内者・そうや自然学校ガイド)
Naoki KITAGAWA (Nature Guide)

[目  的]Objective  

2020年2月1日に北海道中頓別町の敏音知岳(ピンネシリ,標高703m)で発生した雪崩の調査。【速報】
Field observation and measurement in the vicinity of the snow avalanche area that occurred on the SE side of Mt. Pin-ne-shiri on 1st Feb.

注)速報であり,本報告までに、編集によりデータが追加され、数値等は変更される可能性がある.
事故後入山禁止となったピンネシリへは,調査のための入山を枝幸町役場防災担当から認可をうけた。

[災害の概要]Outline of the incident  

(新聞報道などによる)

  • 2020年2月1日午前11時40分ごろ、北海道中頓別町のピンネシリ岳(標高703m)の南側斜面で雪崩が発生.
  • 3人パーティーのうち1人が巻き込まれた。
  • 北海道防災航空隊が救助し、ヘリコプターで名寄市の病院に搬送されたが、死亡が確認された。
  • 一緒にいた仲間や目撃者は無事だった。

(調査チーム聞き取り)

  • 雪崩に遭遇したのは3名のパーティ。
  • 南東ボウル地形全面が雪崩れる。
  • 男性1名が雪崩に巻き込まれて埋没。
  • デブリ(?)は幅30m,長さ300m程。
  • 埋没地点は標高348m付近の沢底,埋没深は2m。
  • レスキューは被害から逃れたメンバーと,単独行の2名が実施。
  • 埋没位置特定までは30分くらい。
  • 埋没時間は約40分。
  • 街の地元町民がドーンという音を聴き,その後雪煙が目視された。

[実施内容]Timeline of the investigation  

2020年2月2日

  • 6:00 札幌発
  • 11:00 中頓別消防・枝幸町役場防災担当への挨拶完了、ピンネシリへの入山許可
  • 12:00 入山
  • 16:50 下山開始
  • 18:00 下山

[成果と効果]Results  

<規模、破断面の特徴>Positions of the investigated place  

積雪調査地点
Invest.Place
緯度
Lat
N44˚53‘24.2‘’経度
Long
E142˚14’09.22‘’標高
Elev.
530m asl.
方位ESE斜度
Slope
積雪表面 45°

<雪崩範囲>Avalanche area  

20200202ピンネシリ調査_V1_scar.jpg
1397x931 241.8KB202002_pin.jpg
539x449 548KB
写真1:ピンネシリ南東斜面全景 Pic 1: SE ball of Mt. Pin-ne-shiri
青丸:おおよその積雪調査地点 Blue point: investigation point
赤線:破断面 red line: avalanche crown
黄線:写真の範囲 yellow line: areas of the pictures below
雪崩の範囲(赤:発生区1に起因,青:発生区2に起因)
・北峰と600m峰の間の尾根をはさんで,発生区が2つに分けられる.
・下部は推定
・破断面は写真で追跡
・発生区ー走路ー堆積区(デブリ)の別はしていない.

<破断面,発生区写真>Crown surface  

20200202ピンネシリ調査_V1_p1.jpg
2736x1824 2128.6KB20200202ピンネシリ調査_V1_p2.jpg
2736x1824 1549.6KB20200202ピンネシリ調査_V1_p3.jpg
2736x1824 1493.9KB
写真2:発生区1の北峰直下部(右方向は写真3の発生区2へ続く)写真3:発生区1と2の境界尾根(右の写真4へ続く)写真4:600m峰西の発生区2(左の写真3から続く)
20200202ピンネシリ調査_V1_zoom.jpg
1500x1125 182.2KB
写真5:写真3と4の重複部を拡大(発生区2)

<積雪断面調査結果>Snow profile  

20200202ピンネシリ調査_V1_col1.jpg
1500x1125 119.6KB【中頓別アメダスより】
・1月30日昼から31日昼にかけて積雪50cm.
・北東~北北東の強風

【左図積雪の解釈】
・1~24cm.1月30~31日のまとまった降雪.既に粒子径が小さく密度の高いしまり雪.
・24~29cmにこしもざらめの弱い層
・51~60cmにボロボロ崩れるしもざらめの層


【記号の凡例】
+:新雪
/:こしまり雪
●:しまり雪
□:こしもざらめ雪
Λ:しもざらめ雪
○:ざらめ雪

20200202ピンネシリ調査_V1_col2.jpg
1500x1125 95KB【積雪温度】
・上層40 cmはマイナス5〜6度程度で比較的低温。
・50 cm以深で温度は上昇に転じ、最下層ではマイナス1度に達した。

【積雪密度】
・表面層を除く上層50 cmは比較的単調な密度分布を示した。
・50〜60 cm付近で顕著な密度減少が確認された。
・60 cm以深のざらめ・こしもざらめ層で急激に密度が上昇する。

【積雪硬度】
・25 cm付近のこしもざらめ層で硬度の低下を確認した。
・50〜60 cm付近のしもざらめ層は硬度が顕著に低く、
表層の新雪を除くと積雪内で最低の値となった。
SnowGrainPhoto200204_1.png
960x720 729.4KB【積雪粒子】
・各層における積雪粒子の写真を撮影。
・各写真の横幅が20 mmの長さを示す。
・51〜60 cmの層には、比較的大きな粒径と気相再結晶の特徴を持つ、しもざらめ粒子が確認された。
ShearFrame200204.png
2499x2265 1426.4KB【積雪面せん断強度】
・シアフレームとプッシュプルゲージを使って積雪面のせん断強度を測定した。
・各層で3回の測定を行い、最大・最小値の幅を横線で、平均値を黒丸で示す。
・すべり面になったと考えられる51〜60 cmのしもざらめ層、24〜29 cmのこしもざらめ層で、せん断強度が顕著に小さな値を示した。

<コンプレッションテスト>Compression Test  

・日時:2月2日9:30AM
・場所:敏音知岳南山麓標高150m付近の道路脇
・実施者:宮下岳夫(雪氷災害調査チーム)



・CTE10 down 25 cmで亀裂.破断なし.
・CTH22(SP) down 85 cmしもざらめ層で破断.

HTB北海道テレビ放送 提供 空撮映像  

HTB北海道テレビ放送 提供
2020年2月2日 敏音知岳上空

所見 Comments  

  • ドロップインはおそらく山頂付近
  • 山頂稜線直下で生じた破断が途中に存在する尾根を越えて600mピーク方向へ伝播
  • 弱層は51-60cmしもざらめ層.ただしすべり面が2段のところもあるので,こしもざらめ層も弱層のひとつと考えられる.

[成果の発表・貢献] Publication and contribution  


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